<本編>
ミックスボイスとは、地声(チェストボイス)と裏声(ヘッドボイス)が混ざったように聞こえる声のことです。地声と裏声の中間の声を意味するミドルボイス(Middle Voice)とも言います。
海外では「ミドルボイス」と呼ぶことが一般的ですが、日本では「ミックスボイス」のほうがより浸透しているようですね。
男性の場合、変声期を迎えると子供のときには出せていた「高い声」が出せなくなります。いわゆる「声変わり」です。これは発育にともなって声帯が厚く長くなり、その声帯がそれまでとは異なった振動をすることによって起こります。
そして、その日をさかいに子供のときには地声だけで普通に歌えていたキーの高い曲が歌えなくなります。どんなに声を振り絞ろうと、白目をむいて血管を浮かべようとも、あの時の高音はもう出ません。声変わりが済んだ男性であれば、誰でも経験があると思います。ただ出るのは、声にもならないカッスカスの息だけですね。裏声を使えばそれなりに高い声は出せても、それで歌うとふざけた感じになってしまって曲の雰囲気を壊してしまいます。
通常はここで自分の声の限界を知り、キーの高い曲を歌うことを諦らめます。そして、歌える別の曲を探すことになるわけです。ただ、そうすると歌える曲が本当に限られてしまってカラオケに行っても何か物足りないんですね。どうも乗り切れないというか…ストレス発散のために歌っているはずなのに、ガンガン歌えていないもどかしさで、かえってストレスが溜まるような妙な感じになってしまうんですね。声変わりを経て、かなり声が低くなってしまった私は特にそう感じていました。
でも、ミックスボイスという、ちょっと特殊な発声法を身につけることでこの問題が解消できます。独特なトレーニングを行なうことで、言わば子供の頃に出していた声帯の振動を擬似的に作り出そうというわけです。当講座では、この地声にも裏声にも聞こえるミックスボイスの魅力と出し方について全15回にわたってお伝えしていきます。
※裏声には「ヘッドボイス」(息漏れのない澄んだ裏声)の他に「ファルセット」(息漏れ、かすれのある裏声)がありますが、ここでは特にことわりがない場合、裏声とは「ヘッドボイス」を指します。そもそも、裏声の定義そのものにも諸説あるようですが、この講座では便宜上、裏声=ヘッドボイスで説明していきますのでよろしくお願いします。
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