10.ミックスボイスを定着させるには

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すでに紹介したように、ミックスボイスが出た直後、私は「心配ないさ~!」を叫び倒して、その発声法を体得しました。ではそのあと、そのミックスボイスを歌で使えるようにするためにはどうすればいいか?
まぁ、ミックスボイスさえが出てしまえば、もうこっちのもんですから、そのあとは、みなさんが各々好きなようにやったらいい話なんですが、私のやり方に興味がある方もいるかもしれませんので一応言っておきますね。

あれだけ挑戦してもダメだった「心配ないさ~!」が出来るようになったとき、私はひとり感動に打ち震えておりました。ちなみに、あの「心配ないさ~!」をマネすると最高音はおよそ(hi C#/ C5)になります。そして、考えました「いったい今、最高音はどこまで出るのだろう?」と。そこで実際に、そのとき出せうる限りの高音を計測したところ、最高音は(hi D/ D5)でした。期待したほどの高さは出ませんでしたが、(hi D/ D5)というとB’zの「イチブトゼンブ」の最高音と同じなんですね。ですから、音の高さ的にはイチブトゼンブが原曲キーで歌えるはずなんです。高さ的には。当然、試してみたくなるわけですよ。やってみました!全力で。

結果は、全然ダメ…。

もう少し低めの曲もいくつか試しましたが、やっぱりダメでしたね。ミックスボイスになったり、裏声なったり、もうシッチャカメッチャカでまったく制御できませんでした。音が不安定すぎて、これでは歌声としては使い物にならないと思いましたね。そして痛感しました、ミックスボイスが出せるということと、それが歌声として使えるというのは別なんだと。

それから1週間くらいは歌は歌わずに、1日1時間程度、「心配ないさ~!」とは別のいろいろな歌のフレーズをミックスボイスを使って発声することに専念しました。すると、なんとなくミックスボイスがいい感じに喉に馴染むというか、しっくりくる感じがしてきました。少なくとも、「これなら歌で使えるんじゃないかな?」と思えるようにはなっていましたね。それでもまだ高音域の曲は無理だと感じたので、まず手始めに中高音域の曲、あのレミオロメンの「粉雪」で試してみることにしました。

「イケる!」

サビの「こなぁ~」が嘘のようになんの苦労もせず出せたんです。それまでは血管がブチ切れそうなほど絶叫しても、絞り出そうにもさっぱり出なかった(hi A/ A4)があっさりと出たんです。純粋に嬉しかったですね。本当に嬉しかった…

正直を言うと、私はこの瞬間まで「ミックスボイス」というものを疑っていたんです。レミオロメンやB’zにしてもそうですが、およそプロと呼ばれている歌手が、私なんかがとても出せないような高音を涼しい顔で歌っているのを見るにつけ、「ミックスボイスなんて言うけど、結局は特異な声帯を持った限られた人だけが出せるもんなんだろ」と。
でも、違った。そうじゃなかったんですね、現にいま、自分で出しているわけですから。私は幼少期から学生まで、ずっと運動系の部活しかやってきませんでした。音楽を聞くのは好きだったけれど、自分でやってみたいと思ったことはなかったんですね。カラオケも社会人になるまでは好きではありませんでしたし、ギターを始めたのも30歳をとうに過ぎてからです。そんな私でも半年程度のトレーニングでミックスボイスを使って歌を歌えるようになったんです。例えそれが偶然であったとしても、「ミックスボイスは誰でも出せる!」その時、そう確信しました。

さて、話が少し逸れてしまったので本題に戻します。ミックスボイスで(hi A/ A4)の曲が歌えることは分かりました。それじゃ、より高い曲を歌えるようにするにはどうすればよいのでしょうか。

その答えは…

…はい。やはり、少しずつ喉を慣らしていくしかないようです。いくら、喉がミックスボイスに慣れてきたといえども、さすがにいきなり高音域で歌うというのは無理でしたね。そんなわけで、その後は、他の(hi A/ A4)の曲を歌い込んでいき、歌えたら徐々にキーの高い曲を選んで歌っていくことにしました。すると、次第にhi B,hi C…と使える音域もだんだん広くなっていきました。

…ところが、同じようにやっているのに(hi E/ E5)以降がまったく出せない。どうやら、ここが私の限界点なんだろうと勝手に納得しかけていました。
このとき、はじめて(hi A/ A4)が出せた時からすでに3か月ほど経っていたと思います。でも、ふと思い返してみると、それまで私は男性ボーカルの曲しか歌ってこなかったこと気づいたんですね。もしやと思って、それから暫くは女性ボーカルの曲、はじめは最高音が(hi D/ D5)くらいの曲ばかりを中心に歌い込むことにしました。もちろん原曲キーで。それから、こちらも次第にキーを高くしながら歌っていきました。そうしたら、何が良かったんでしょう。裏声とミックスボイスのスイッチングを頻繁にやったのが良かったのか?それとも、あえて女声を意識して発声したのが良かったのか?はたまた、別の要因があったのか?その理由は定かではありませんが、気づいた時には(hi G/ G5)まで出るようなっていました。期間は2か月ほどでしたね。

これが誰にでも当てはまることかどうかは分かりませんが、みなさんの中でも、もし音域に伸び悩んでいる方がいるなら、一遍、女性ボーカルの曲を歌い込むというのも一つの手段かもしれませんね。

※途中、何度か「歌い込む」という表現を使っていますが、これはその曲の最高音に当たる部分を重点的に歌い直すというほどの意味合いで、必ずしも曲の初めから終わりまでを何度も繰り返すというわけではありません。目的はあくまで高音域をミックスボイスで出すことですから。毎回、曲を始めから全部歌っていたのでは時間がもったいないですね。

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