11.ミックスボイスの見分け方

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私は声楽などの学問としての音楽に触れたことがないので詳しくはわかりませんが、ミックスボイスはよく裏声としてのカテゴリーに分類されたり、裏声そのものと認識されたりしているようです。確かに、音のみに焦点を合わせた場合は、ミックスボイスも裏声もともに高音域をカバーできるという点では同類といえます。この点については何ら異論はございません。
でも、両者を発声するときの声帯の振動のさせ方、つまり発声方法という観点から言うと、私の個人的な感覚としてはやはりミックスボイスと裏声は別物と考えています。例えば、裏声が出せる人であればわかると思いますが、裏声を出すときの声帯の力の入れ方は地声を出すときのそれとは明らかに違いますよね。そして発声した時に振動する声帯の感覚的な違いもよくわかると思います。同じようにミックスボイスと裏声でも声帯の力の入れ具合が違いますから、当然、声帯の振動の加減も異なってきます。

これは一見どうでもいいことのように思えるかもしれませんが、実はかなり重要なことなんです。というのも、声帯の振動を意識していないで音だけに集中していると、「たまたまミックスボイスが出た!」という最大のチャンスを逃してしまうことになるからです。
ただでさえミックスボイスと裏声は音質が似ていますし、他人はおろかあなた自身でさえ自分のミックスボイスを聞いたことがないわけですから気づかないのも無理はありません。案外、この記事を読んでいる皆さんの中にも、かつてミックスボイスを出したことがある人もいるかもしれませんね。ただ、それがミックスボイスだとは気づかずに「変な声が出ちゃった」くらいにしか思わなかったりして、スルーされているケースも結構あるんじゃないかなと思っています。

でも、普段から声帯の振動を意識していればミックスボイスが出たときに気づかないということは、まずありえません。ミックスボイスと裏声では振動の仕方が全然違うんです。ですが逆に言うと、意識しなければ気づかないくらい微妙なものでもあるわけです。「そこが難しいところなんです!」と言いたいところですが、そんなものは毎回オシロスコープをセットしてトレーニングすれば済む話ですね。波形を見れば一発で違いがわかりますから(笑)。

ちなみに、私の地声と裏声、ミックスボイスの波形をそれぞれオシロスコープで比較すると、以下のようになります。(使用アプリ: ios「e-scope 3-in-1」)

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このように、波形で比較すると違いが一目瞭然ですね。ミックスボイスは波形で見ると、裏声よりも地声に近いことがわかります。裏声は曲線がなめらかなのに対して、ミックスボイスは鋭角でギザギザしていますね。
もっとも、これは誰がいつ、どこでやってもこの通りの波形になるというものではありません。人それぞれの声の特性だけでなく、その日のコンディション、環境によっても波形の形状は異なってきます。
実際に、私もさまざまなアーティストの歌声をサンプリングして波形を観察してみましたが、まったく同じ形というものはありませんでした。ですが、程度の差はあっても「裏声」の波形はなめらかな曲線である一方で、「ミックスボイス」は鋭角が多く地声に近いという特徴はおよそどの声でも確認できました。

日頃から自分の声の特徴を波形で観察しておけば、ちょっとした違いにもすぐに気づくことができますからとても便利ですね。裏声とミックスボイスを判別するのに自分の耳だけでは自信がないという人は、オシロスコープで確認しながらトレーニングするといいでしょう。

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